クレジットカード決済とQRコード決済。キャッシュレスの覇権争いについて

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2019年6月現在。

QRコード決済が群雄割拠する時代がやってきました。
●LINE Pay
●Origami Pay
●PayPay

QRコード決済が乱立する中で、この3つが際立って注目されているように思われます。

しかし、「キャッシュレスで決済」というのは、QRコードよりも、ずいぶん前にすでに世の中に浸透していました。クレジットカードという形で。

すでにクレジットカードがあり、モバイルSuicaがあり、iDやQUICPayがある中で、なぜQRコード決済が台頭できたのか?

我々消費者は、どの決済手段を用いるべきなのでしょうか?

今回はこの、クレジットカード決済とQRコード決済の戦いについて私見を述べたいと思います。

1.カード決済のジレンマ

お客さんがクレジットカード決済をした場合、お店は「加盟店手数料」というものを払うことになります。

お客さんがカードで支払をした場合、決済額の何%を店舗側がカード会社に支払うというシステムですね。

例えば…
①客がカードで100円支払う
②店はカード会社に10円支払う
③店の売上は90円
…簡単に言うとこんな感じです。

一方、お客さんが現金で支払った場合…
①客が現金で100円支払う
②店の売上は100円
③おわり(´∀`)
…と、こうなります。

つまりお店は、お客さんにカードを使われると売上が減るわけなんです。

「じゃあカード対応しなきゃいいじゃん」という意見が当然出てきますよね。

実際にそういう理由で、未だに「支払いは現金のみ」としているお店は少なくありません。

ただ、厄介なのは「現金なるべく持ちたくないからカードで払えないお店は避ける」という人も少なくないということです。

そうです。私のような人間のことです。

こういう人に避けられてしまうと、「キャッシュレス派」からの売上は0です。

このケースだけ切り取ったら、カード対応にした方が売上が上がる気がしますよね。

利益が0円か90円かだったら、余裕で90円を取りますよね。

ただ、「カード使われると10円抜かれるから、カード使う人に限り10円多くもらえばいいや」という訳にはいきません。

それはカード会社とお店の契約で禁止されています。

たまに「カード決済時はプラス何%頂戴します」とかトイレに貼ってある飲食店を見かけますが、こういう事情があってのことです。

このように、お店がカード決済を導入しようとすると、色々なジレンマが起こるわけです。

2.民衆の味方

QRコード決済がここまで台頭した理由は「民衆の味方」であったという部分に尽きます。

QRコード決済は…
●店舗導入コストが少ない
●加盟店手数料がない
…と、言われています。

実際に私がお店を経営したりQRコード決済を導入した経験が無いため、エアプと言われればそれまでですが、QRコード決済は「店舗側の負担」が少ないようです。

つまり、クレジットカードだと…
①客がカードで100円支払う
②店はカード会社に10円支払う
③店の売上は90円
…となりましたね。

これがQRコード決済だと…
①客がQRコードで100円支払う
②店の売上は100円
③おわり(`・ω・´)
…となるわけです。

つまり、お店はQRコード決済を導入することによって、念願の「加盟店手数料を支払わずにキャッシュレス派も囲い込む」ことができるようになったわけです。

「すでにカードやFelica決済が浸透しているのに、何しにQRコード決済乱立してるわけ?」という問いの答えはここにあるんですね。

お店にとっては、カード会社に手数料を取られないのでありがたい。
お客さんからしても「カード決済時は◯%UP」などの皺寄せが来なくてありがたい。

このように、QRコード決済の「みかじめ料を取らないスタイル」が民衆から支持を受けた形になりました。

重税を失くすことで支持を得たQRコード決済。

彼らはそれだけに留まらず、更なる1手を繰り出します。

3.鬼の様な割引

QRコード決済の知名度が一気に上がったのは、PayPayが行った鬼の様な割引でした。

PayPayで決済すると、最高で全額キャッシュバックというものです。

消費者たちは、最もキャッシュバックの恩恵が受けられる「電化製品」に狙いを定め、ビックカメラに殺到しました。

ここから、LINE PayやOrigami Payも追従して頻繁に割引を行う様になります。

クレジットカードの利用でも割引が受けられたり、ポイントが多く貰えるキャンペーンが行われることがあります。

しかしこれらは、せいぜい1〜5%の割引がいいとこです。

1%のポイント付与率で貯めたマイルでファーストクラスに乗って、やっと15%近くの還元率になりますが、あまり大衆的ではありません。

QRコード決済は、現状「ダイレクトに割引」を実現することができるので、消費者からの注目も集まっているんですね。

さらにQRコード決済は、割引した分の金額を店舗に負担させることもありません。

こういった理由から「もうQRコードでよくね?」という意見が出てきているわけです。

4.カードの本領は付加価値

本当に「もうQRコード決済でいい」のか?

クレジットカード決済には、QRコード決済に勝る部分がないのか?

もちろんあります。

それは「特典」です。

QRコード決済の武器が「割引」だとしたら、クレジットカードの武器は「付加価値」です。

実はクレジットカードは「決済する」以外にも色々な役割を持っているんですね。

例えば…
●ショッピング保険
●国内・海外旅行保険
●提携レストランでの割引
●提携ホテルでの割引
…など

もっとマニアックになってくると…
●レストラン利用時リムジンで送迎
●何でも相談できるコンシェルジュサービス
●指定の航空会社で上級会員待遇
●空港や都心のラウンジが使える
●個人賠償責任保険がつく
…などのサービスが受けられる様になります。

これらは「決済時に割引を受けられる」というのとは、全く別次元の特典です。

カードを使うことによって「+α」のサービスを受けることができる。

つまり「割引」ではなく「付加価値」を得る。

これらはQRコードには真似できない、クレジットカードならではの本領という訳です。

5.クレジットカードのこれから

ただ「決済手段」という役割において、クレカがQRコードに大きく水を開けられているのは確かです。

クレジットカード会社が利益を出す方法の一つが、先述した「加盟店手数料」によるものでした。

これからは、そのシェアがQRコード決済によって、更に奪われることになります。

例えば…
●保険を適用させたい大口の支出はカードで
●ダイレクトに割引を受けたい小口の支出はQRコード決済で

となってくると、保険を適用させる必要のない小口決済はQRコード決済に流れることになります。

小口決済と言っても、その分回数が多くなるので相当な決済額です。

これがよそに流れるのは、カード会社としてはたいへん痛い損失になります。

恐らくそういった流れから、例えば高級路線を歩んでいたアメックスも「コンビニでキャッシュバック」といった「小口決済でも使ってもらう施策」を積極的にアピールしだしたのでしょう。

しかし、どう考えても「みかじめ料無し」である、QRコード決済のほうが民衆にとってウケがいいのは確かです。

こうなると「加盟店手数料における収益」が減った分、クレジットカード会社は別の戦略が必要になってきます。

「決済」することによるメリットを増やすか。

クレジットカードの年会費を上げて「特典」を増やすか。

これからどういった攻防が繰り広げられるのか注目したい所です。

6.まとめ

QRコード決済が台頭してきたポイントは…
●店がシステムを導入しやすい
●客が割引を利用しやすい
という点になります。

これを受けて今後、「クレジットカードによる決済」は間違いなく減るでしょう。

すると、クレジットカードはなんとか「カードで決済してもらう方法」を考えなければいけなくなります。

例えば「デルタ・アメックス・ゴールド」の様に、年間150万円使わないとゴールドメダリオンになれない。という条件を付ければ、カードで決済してもらえます。

また、「アメックス・センチュリオン」や、「JCBザ・クラス」の様な「インビテーション制」のカードも、カードでたくさん決済することがインビ送付の条件なので、QRコードにシェアを奪われることはないでしょう。

逆に、こういった「カードで決済するメリット」が独自性の強いものでないと、淘汰されていくことになります。

QRコード決済よりも還元率が低い「年会費無料カード」などは、その存在意義が切実に問われることになるでしょう。

私としては、これからクレジットカードが「決済手段はあくまでオマケ」として、もっと保険やサービスを充実させてもらいたいです。

今後、クレジットカードとQRコード決済の明確な差別化がなされ、より私たちの生活を豊かにしてくれることを願っています。